多田誠司さんのYoutubeチャンネルでインタビューをしていただきました

先日、日本を代表するサックス奏者であります、多田誠司さんがマウスピースのクリーニングとバランスのチェックでお見えになりました。そしてその後にYoutubeチャンネルのインタビューを受けることに。(そのチェックの際に気付いたことがあり、それは後日また書きたいと思います。)

マウスピースメーカーになった経緯など、(熱く?)語っております。動画となるとちょっと照れくさいですね。

多田さんのチャンネルで動画として公開されております。是非ご覧ください!

 

The SAX vol.91 (ザ・サックス) 2018年11月号

The Sax誌 2018年11月号に奥津マウスピースに関する記事が載っています。

The SAX vol.91 (ザ・サックス) 2018年11月号 amazon

「いま注目すべきマウスピース22本」という記事の中で、製作者が書いたコメントとともに、最近話題のマウスピースが紹介されています。奥津マウスピースで紹介されているのは、ヴィンセントへリングのカスタムモデルと、アルト、テナーのトラディショナルモデルの三つです。是非読んでみてください。

ところで、ブログやフェイスブックなどで、私はサックスのレゾネーターについて長く書いています。

レゾネーターを含むパッドの取り付けは、サックスの音作りの大きく左右している技術なのですが、時代とともに変質してきているという内容です。つまり製造やリペアに必要な設計思想の一部が、どうも継承されていないように思える、という話です。

実はこうした事情は、サックスのマウスピースにも同じようにあります。マウスピースは本来は製作に手間がかかる上に、なかなか高値では売れない分野なので、そうした設計上のアイデアの変質というのはより顕著かもしれません。

私がサックスマウスピースの販売を始める前に、三年間、試作を繰り返していた時期がありました。

当時、CNCを使いハンドフィニッシュで丁寧に作れば 、高品質のマウスピースはすぐにできると思っていました。だいたい一年程度ですぐにできるだろうと。しかしどんなに精度を上げて作り上げてもなぜか品質は上がらず、プラス二年、膨大な試作品を作ることになりました。

その結果分かったのは、品質が上がらない原因の多くは精度の問題ではなく、私が設計上の様々なアイデアを理解していなかったからなのです。

レゾネーターの話でもそうですが、なぜパッドの裏側には空間があるのか、なぜその形状にならざるを得ないのか、それを理解していなければレゾネーターは機能しません。つまり作り手の設計についての理解度が、結局は製品の品質を分けているのです。

マウスピースも同じで、作り手がカラクリを理解していなければ、どんなに精密な工作機械を使っても、どんなに丁寧にハンドフィニッシュしても無駄だということなのです。

私は大学では歴史を専攻していたのですが、多くの技術革新は精度の向上ではなく、設計思想の更新によってもたらされるものです。銃器の発展、自動車の発展、楽器の発展でもそうですし、ジャズミュージックの発展でもそうでしょう。

マウスピースの開発にかかった三年間で理解したのは、かつて作られていた名品といわれているものに、様々なアイデアが盛り込まれていたかということ。そしてその合理的な組み合わせが考えられていたということです。しかしそうしたアイデアは、現在では継承されていないものも実に多いのです。

かつての技術者が持っていたアイデアを継承し、手間をかけて実直に作られたマウスピースが、今後のジャズサックスには必要だと思います。私が製作しているマウスピースは、かつての名品のコピーにとどまることなく、より洗練されたものになっているはずです。

「The SAX vol.91 11月号 」、是非参考にしてみてください。

 

 

「君の名は。」 題名のない音楽会

1月8日に放映された「題名のない音楽会」。テレビ番組や映画のテーマ曲がその回の主題でした。その中での、去年からヒットしているアニメ映画「君の名は」のテーマ曲です。

オーケストラと共演され、美しいソロを奏でているのは、高橋弥歩さんのサックスです。

様々なサポート、レコーディングで活躍されている方です。MayJさんやクリス・ハートさんのサポート、本田雅人B.B.Stationなどなど、様々に活躍されていて、ここでは紹介しきれないほどです。

詳しくは下記ブログまで。
サックスプレーヤー 高橋弥歩の blog

奥津マウスピースのトラディショナルⅡモデル(アルト)を、様々な仕事で使用しているとご本人からお聞きしていました。

ただ、この演奏は聴いてみて判るとおり、とてもクラシカルな音色。形は奥津マウスピースっぽいけど・・・。不思議に思ってご本人にお聞きすると、使用されているのはやはりトラディショナルⅡだとか。レッドジャバと組み合わせてクラシックに対応した、とのこと。奏者の技術でこんなにも対応可能なんですね。素晴らしい。

 

三木俊雄氏にレビューを書いていただきました。

Toshio Miki

三木俊雄氏にレビューを書いていただきました。

ご自身がリーダーとして率いる「フロントページ・オーケストラ」や、「小曽根真 featuring No Name Horses」など様々な方面でご活躍中です。

レビューにもありますが、去年にお話をいただきオットーリンクスラントから、今ではメインのマウスピースとして使用していただいております。(この写真のマウスピースはまだスラントだそうです。)

レビューには、自分に合ったマウスピースを選ぶ際に参考になることも書かれています。是非、リンク先の全文をお読みいただければと思います。

一部抜粋
”僕が今まで吹いてきたマウスピースの中ではこのKen Okutsuは最高のマウスピースだ。”

全文はこちら。

三木俊雄氏のレビューのページ

テナー・トラディショナル・モデル 7

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CNC導入時の試作品

CNCを導入した最初期の試作品です。まだロゴを入れる技術はありません。

CNCで切削し、ハンドフィニッシュすることではるかに個体差が少なく作ることができます。当初は、CNCで作りさえすればすぐに品質の高いマウスピースが製作できるかと思っていました。

ところが、その予想は大きく外れます。出来上がったものは、音色にしても音の立ち上がりなどの性能にしてもイマイチで、まだまだ既存の商品によくあるレベルといった感じだったのです。CNCを使っただけでは高品質のものは作れないのです。

開発の過程で最も難しかったのは、豊かな倍音と安定した吹奏感を両立させることでした。それを実現するためにはまだ非常に多くの見落としがあったのですが、それが何なのかこの段階では分かりません。ただ見落としている要素が、おそらくもっと微細な部分にあるのだろうということが分かっただけでした。

マウスピース開発を始めてから、CNCを導入した試作品ができるまでにかかった時間が約一年です。しかしここからの方が長かったのです。この先、設計の細かい部分を検証するのにさらに二年を要することになります。

 

初期の試作品

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懐かしいものが出てきました。

マウスピース作りを始めた頃に作った試作品の数々です。これを仕事とする約三年ほど前のものです。

当時はCNC(コンピュータ数値制御)ではなく、手動制御の旋盤、フライス盤(ハンドルを手でクルクル回すやつ)で作っていました。

なかなか味のあるものですが、まだまだ売り物になるクオリティではありません。

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山野楽器 仙台店に置いていただけるようになりました。

この度、山野楽器 仙台店にマウスピースを置いていただけるようになりました。

夏頃から少しずつ置いていただいていたのですが、生産が追いつかず個数が少ないままでした。このほど、やっと追加のマウスピースを送ることができました。テナーは一通り吹いて選べると思います。ソプラノも5、6番が一本ずつあります。

土日は、値上げ前に試奏して購入できる最後の休日です。是非吹いて試してみて下さい。

山野楽器 仙台店

http://www.yamano-music.co.jp/a/shops/sendai/index

〒980-0021 宮城県仙台市青葉区中央2-4-2
TEL022-797-2079 (2F 管楽器フロア)

11月1日に値上げします。

11月1日に値上げします。

価格についてはまだ少し検討中ですが、おそらく5万円前後になります。(10月中までに予約された方に関しては、当然、値上げは関係がありません。)

私は以前、雑誌のインタビューを受けたのですが(The Sax誌2015年1月号)、そのときには使用されているプロ奏者の名前を尋ねられ、数人しか挙げることができなかったことを覚えています。

その一年半経った今日、ここに挙げきれないほどの奏者にご愛顧いただいていることは、奥津マウスピースがプロの現場に急速に浸透しつつあるといえると思います。

奥津マウスピースが支持される理由は、主に二つあると思います。

(1)非熟練工による分業体制を採らず、一人の人間が設計から最終的な仕上げまで管理していること。そのため、整合性のある一貫した物作りができるということ。

(2)かつてのマウスピースの名作にあった設計思想を綿密に調査して、それらをブラッシュアップした形で使っていること。
かつてあった設計思想は、そのほとんどが継承されずに失われてしまっているのが現状で、それらを復興できたメーカーは、私の知る限り奥津マウスピースが初です。

こうした品質を維持するには、私自身が習得しなければならない知識や技術も多岐にわたり、また一本あたりに本当に多くの手間が掛かります。正直、商売をかなり度外視して手間を掛けています。

ここ数十年でマウスピースメーカーの数は確かに増えました。しかし大量生産化や国境をまたいだ分業化の中で、本当にハイレベルのものを作ることができるメーカーは逆に減りました。おそらくこうした傾向は今後も強まるでしょう。

ヴィンセントへリング氏、三木俊雄氏、多田誠司氏。彼らはヴィンテージマウスピースと呼ばれるものから奥津マウスピースに移行した方々です。(ヴィンセントはヴァンドレン社のプロトタイプを経ましたが)これらのことは、彼らのような経験豊かな奏者が納得できる品質のマウスピースを作ることが、この数十年間に徐々に難しくなったことを端的に示しています。

このような状況の中で奥津マウスピースが存在し品質を維持できることが、私は意義のあることだと心から思っています。そのために、品質に見合った価格に今後なっていくことは、どうかご容赦いただきたく思います。

 

ヴィンセント・ヘリングの日本ツアー

ヴィンセント・ヘリング氏のジャパン・ツアーが先日終了しました。(現在は中国をツアーで回っているそうです。)

私も7月27日に赤坂ビーフラットに聴きに行きました。

小林陽一さんのグッドフェローズバンドを母体とした、エリック・アレキサンダーとの双頭バンドでした。またその日は、原川誠司さん、太田剣さん、川嶋哲郎さん、山田穣さんといった、錚錚たるサックス奏者をゲストとして迎え、とても素晴らしいステージでした。

 

ヴィンセントが使用していたマウスピースは、もちろん私が製作したヴィンセント・ヘリング・カスタムモデル!

最近、やっと提携している店舗にも回せるようになりまして、船橋ミュージックポルテと、新大久保サウンド風雅にそれぞれ二本置いていただいてあります。

日本とアメリカの間で何度も試作品をやりとりして完成させた、とても良い設計になっていると思います。ヴィンセントも、”You will never find better one.”、「これ以上に良い物は見つからないだろう。」と書いています。是非試奏してみて下さい!

 

新エボナイトの試作品と、検証にかかった三年間

新しい種類のエボナイトを手に入れたので試作を作りました。

ドイツのメーカーのもので、今まで試したエボナイトの中でもかなり硬い種類のエボナイトです。写真だと全く判りませんが、少し青黒いような色をしています。

私は天然ゴム使用のエボナイトしか使いませんが、同じエボナイトでも含まれる硫黄成分の配合や工法などで素材のニュアンスが変わってきます。

エボナイトは硬くなるにつれて、少し音色の複雑さが減る傾向をもつように思います。雑味が減ってスッキリした音色になるとも言えます。ハイバッフルやフォーカスコアなどであればこういう素材も合うかもしれません。硬いので耐摩耗性も高そうです。

こうした一点物の試作品を自由に作ることができることが、私のように設計から完成までの全てのノウハウを持っているメーカーの強みの一つです。下請けを使っているメーカーや、大量生産メーカーにはない強みです。

仕事としてマウスピース製作を始める前、三年の準備期間があったのですが、このような試行錯誤を朝から晩まで延々とやっていたなぁ、と思い出されます。こうした数多くの試行錯誤が、奥津マウスピースの品質を支えているのです。