忙しさにかまけてサックスパッド(タンポ)の記事が途中になっていますが、もう少し書きたいことがあります。
パッドの記事を書いてから、リペアマンの方々から、直接的、間接的にご意見をいただきました。実際に比較検証した方には好評のようです。どなたも「このような考え方は初耳」とおっしゃっていたので、やはりレゾネーターの機能は廃れてしまっているようですね。「しかしこのようなやり方は面倒すぎて仕事ではやってられない」という意見もいただいたので(笑)、廃れてしまった理由は取り付けが面倒というのも大きいのでしょう。
さて、今回はコーンのレゾパッドの話です。1910年代から40年代くらい(?)にコーン社で採用されていたパッドの方式です。
持っていたレゾパッドは紛失してしまったので、リンクを貼っておきます。分解したところが載っています。
コーン・レゾパッドの構造 (Conn Res-O-Pads)
特徴は、パッドの側面に金属のリングが入っていることです。その側面のリングがキーカップの縁と組み合い、キーカップの底までパッドが到達しないようになっています。例えると、フライパンの蓋のようです。普通のパッドはいわば「落し蓋」ですね。
わざわざリングを入れてそのような構造にしているのは、パッドの側面のみを固定するためだろうと思います。逆に言うと、パッドの裏側全面を接着しないためです。そうすることで、レゾネーターがより共振しやすくしていたということです。だからこそ『レゾ』パッドなのでしょう。
(このことからも、かつての技術者が、パッド・レゾネーターとは裏側に空間がある振動板だと捉えていたことはまず間違いがないように思います。)
しかしこの方式では、パッドをキーカップに対して傾ける調整が、構造上全くできません。取り付けや交換はかなり面倒だったのでしょう。そのためかこの取り付け方式を採用していたメーカーはコーン社のみです。
私は別に「ヴィンテージサックス信者」ではないのですが、音色に魅力を感じて手に入れるサックスは大体がヴィンテージ品です。
操作性やピッチバランスに難があるものもあるのですが、やはり音の厚みや深みがよく考慮されていたものが多かったように思います。ヴィンテージサックスにいまだに多くのファンがいるのは、ノスタルジーのためだけではないと私は思います。
パッド・レゾネーター以外にも、現在は意味がよく分からなくなってしまった、あるいはコストに見合わず省かれたようなアイデアが、設計に盛り込まれていたのかもしれません。