パッド(タンポ)の二つ目の役割、リフレクター(反射板)としての役割について。続きです。
サックスの歴史の中で、リフレクターという意味では最高の設計と思われるサックスが1941年に発売されます。
1941 Selmer Padless
大戦でフランスからの部品供給が途絶えたセルマーUSAは、ビュッシャーに委託して「パッドレス」の製造を開始します。
このサックスはリング状のパッドがトーンホール側についているそれまでとは変わった設計のサックスです。
トーンホールの面積全部が硬い金属板で閉じられるので、無駄なく音を反射すると謳われています。またリング状のパッドの面積分全てが金属板と接触するので、閉塞する性能も3倍から9倍アップ!とのことです。
ところが表紙にあるように5年以上かけて開発したパッドレスは、わずか5年後の1946年に販売を終了します。その後、この設計が継承されることはなく、通常のパッド形式のサックスに戻ります。
なぜこの設計が継承されずに短命に終わったのでしょうか。
理由は定かではありませんが、私が想像するにはパッドの三つ目の役割がほとんど考慮されていなかったからかもしれません。
パッドの三つ目の役割とは、レゾネーターとしての役割です。