サックスの音のもとになっているのがリードの振動です。このことはサックスを吹いたことがあれば直感的に解ると思います。それでは、リードの振動というのは実際にどのようなものなのでしょうか。まずこのことを踏まえることで、マウスピースとリードについての後々の説明が解りやすくなると思います。
おそらく多くの方が想像しているのが、リードのしなる部分が単純に空中で振動しているというもの。小学生の時によくやった、プラスチックの定規を机の端でしならせて放すとビヨ~ンと振動しますよね?そんな振動のイメージを持っている方が多いのではないかと思います。雑誌や教則本でもそのように図解されていることがあります。
しかし書籍によっては少し違った説明をしているものもあります。
サックスの構造についての有名な解説本、ラリー・ティール著「サクソフォーン演奏技法」にリードの振動に関しての記述があります。(p.19)
その本の説明では、リードの振動は上記の定規の振動とは違って、一回の振動毎にマウスピース側にしなりきって、マウスピースの入り口を完全に閉塞しています。振動するたびに息の通り道が一回塞がっているということです。
・・・・・。ちょっと信じがたいですよね?私も高校の吹奏楽部室にあったこの本を読んで、ウソくさい話だなぁと思っていました。
そこで実験。
リードの先端と、マウスピースのティップレールにアルミ箔を貼り、電池とLED豆電球につなぎます。もしリードの振動時マウスピースの入り口を閉塞しているのであれば、リードの先端とティップレールが触れ合い豆電球が点くはずです。
演奏してみると・・・、ちゃんと点灯します!
このことから、ラリー・ティールの記述どおり、振動時のリードの先端はティップレールまでしなりきっていることが解ります。ちなみに音量が小さいとき、サブトーンのとき、ハーフタンギングのとき、いずれも点灯します。ただし音量が小さいときは少し暗めに点灯します。
もうひとつ、この説を補強するものを紹介します。
リードの振動を高速度カメラで撮影した動画がyoutubeにあります。
ここでもリードがマウスピース側に完全にしなりきって、ティップオープニングを閉塞しているのが見てとれます。
この動画を観て興味深いのは、リードはマウスピース側にだけしなっているということです。マウスピースの逆側にはほとんどしなっていません。この辺の記述もラリーティールの図解と一致しています。
上の方でも書きましたが、リードの振動がマウスピースのオープニングを閉塞しているということをまず踏まえることが、リードとマウスピースの組み合わせについて理解するのに丁度いい入り口になると思います。