キーの開きを狭くしたときに起こりうる問題点、その続きです。
キーの開きを狭くしたとき、音抜けやピッチに関して、特に問題の起きやすいトーンホールがあります。それは、サックスの設計によって決まっています。それを決めているのは、運指をしたときに、その半音下のトーンホールが閉じる構造かどうかです。
問題が起こりにくいトーンホール
まずは問題が起こりにくいトーンホールの説明から。
たとえばC#の場合、C#のトーンホールは当然開いています。その半音下のC(ナチュラル)のトーンホールも連続して開いていることがわかります。こうした、半音下のトーンホールが連続して開く構造になっている場合、半音下のトーンホールがC#の音抜けを補助するので、キーの開きを狭くしても、比較的問題が起こりにくい構造だといえます。
問題が起こりやすいトーンホール
次に、その半音下のCの場合です。Cの運指をしてみます。 キーの様子をみると、C#のトーンホールが閉じられ、その下のCのトーンホールが開いています。そして、その半音下のBのトーンホールが閉じていることが判ります。(そのさらにひとつ下のBbのトーンホールも閉じています。) 半音下のBのトーンホールが閉じているので、その分Cのトーンホールは音抜けを単独で稼がなければならない割合が大きいということです。そのため、Cのトーンホールは開きを狭くしたときに音抜けやイントネーションの観点で問題が起きやすい構造であるといえます。
問題の起きやすい五つのトーンホール
こうした、サックスの設計上の理由で半音下のトーンホールが閉じる構造になっている(問題が起きやすい)のは、C A F# E Dの五つのトーンホールです。(Dトーンホールは半音下のLow C#がクローズド・トーンホールです。)
トーンホールの大きさの違い
サックスを観察すると、前述の五つのトーンホールが上下のトーンホールよりも大きく設計されていることが判ります。もっとも顕著なのがソプラノ・サックスです。
これらのトーンホールは半音下のトーンホールが閉じる構造なので、音抜けや音色を同じにするには大きめに設計する必要があるためです。それはつまりキーの開きを狭くしたときに、音抜けやイントネーションに問題が起きやすいということです。
これら五つのトーンホールの中でも、経験上最も問題が起きやすいのがCのトーンホールです。下の写真は分解時のアルトのトーンホールの写真です。上からC#、C、Bのトーンホールです。上下のトーンホールに比べてCのトーンホールだけがかなり大きいことが判ります。
基準となるのはこれら五つのトーンホール
サックスのキーは複雑に連携しており、単独でキーの開きを設定できない場合も多くあります。そのとき基準になるのは上記五つのトーンホール(C A F# E D)の開きです。キーの開きを狭めていくと大抵の場合、他のトーンホールよりもこの五つのトーンホールに先に問題が出始めるので、連携しているキーの開きを決めるときは、これら五つのトーンホールの開きを優先して決めると良いでしょう。