ティップ・オープニングとは
ティップ・オープニングとは、マウスピースの先端とリードの先端の間にできる、息の通り道となる隙間のことです。略して単に「オープニング」といったりします。
マウスピース・メーカーの多くはオープニングの大きさを作り分けていて、それぞれに数字やアルファベットを割り振っています。一般的に、数字が大きくなるほど、アルファベットはAからZに近づくほど大きなオープニングになります。
ティップ・オープニングで何が違う?
オープニングの大きさが違うと吹奏感が大きく変わってきます。
オープニングが大きくなると、
- 音量が大きく、力強い音色になる。
- 息の消費量が大きく、コントロールしづらい。また、疲れやすい。
- 柔らかいリードと組み合わせると相性がよい。
逆にオープニングが小さくなると、
- 音量が小さくなる。
- 息の消費量が小さく、コントロールしやすい。疲れにくい。
- 硬いリードと組み合わせると相性がよい。
サックスの音が鳴っているとき、リードは振動するたびにマウスピース側にしなりきってオープニングを閉塞しています。(詳しくはこちら。)ですのでオープニングの大きさというのは、リードがしなる大きさでもあります。オープニングが大きいほどリードを大きくしならせなければならないので、必要とされる息の力や量も大きくなるということ、あるいは柔らかめのリードが必要になるということです。小さいオープニングの場合は丁度その逆です。
オープニングのサイズは演奏を大きく左右するので、オープニング・サイズを慎重に検討しましょう。自分に合ったティップ・オープニングをきちんと調べることは、マウスピースの選び方を理解するうえでも必要な知識だと思います。
番号ではなく実測値を知っておこう
多くマウスピースには5番、6番などのオープニングサイズを示す番号が記されています。しかし自分に合ったマウスピースを選ぶのに、その番号を知っているだけでは不十分です。なぜならマウスピースの番号の付け方はメーカーごとに基準がバラバラで、一貫性は無いからです。例えばメーカーAの5番とメーカーBの5番では、同じ番号でも実際のオープニングの大きさが全く違うということも、ごく普通にあることなのです。
マウスピースを吹いてみて、「すごくコントロールしにくいなぁ」と思ってもそれは単にオープニングが広いだけかもしれないし、「すごく音量が小さいなぁ」と思ってもそれは単にオープニングが狭いだけかもしれません。オープニングを何か統一した基準で比較しないことには、マウスピースの良し悪し、自分に合っているか合っていないかを正確に判断できません。
こうしたオープニング・サイズの選び間違いが、演奏や上達の妨げになっている事例がきっとたくさんあるのだろうと思います。こうした混乱を避けるため、メーカーが設定した番号ではなくオープニングの実測値を知っておくことが大切になります。
オープニング・チャートでオープニングを調べよう
「Saxophone Mouthpiece Facing Chart」や「Saxophone Mouthpiece Opening Chart」などの言葉でネット検索してみましょう。多くのメーカーのティップ・オープニングをまとめて一覧表にしているものがいろいろ見つかると思います。これをみればマウスピースのオープニングの実測値を調べることができます。
よくまとまっていてオススメなのがこれです。他メーカーのサイトの資料ですが・・・、気にせずリンクを張っておきましょう。
JodyJazz Mouthpiece Facing Charts
一覧表の上の段に基準となる数値が載っています。単位は1000分の1インチです。その数値に0.0254を掛けるとミリメートルに直せます。ミリメートルに直した方が実感を持てるので良いでしょう。
たとえばアルト用の75(単位は1000分の1インチ)だったら、75×0.0254で1.905、約1.9mmだということが判ります。大体1000分の1インチが4違うと0.1mm違うので、覚えておくと便利です。つまり75から4小さい値、71であれば約1.8mm、同じように75から4大きい値、79が約2.0mmです。
改めてチャートを見てみましょう。左にあるのがメーカーやモデルの一覧です。同じオープニングのサイズでもメーカーやモデルによって番号の付け方が違うのが判ると思います。また多くのメーカーは大体0.10mm~0.15mmぐらいの差をつけてオープニングの番号を付けているのが判ります。
チャートにないものは、メーカーのウェブサイトに行けば載っていることもあります。私の製作しているマウスピースのオープニングも商品ページに載っていますよ。(例 : Alto Traditional Model)
自分に合ったオープニングを知っておこう
私が考える、一般的なオープニングのサイズを一応書いておくと、
- ソプラノ 1.4~1.5mm
- アルト 1.8~1.9mm
- テナー 2.4~2.5mm
このぐらいの開きから試してみると良いと思います。いずれもジャズ用のマウスピースの場合です。クラシック用の場合はもっと小さいサイズのものを使うことが多いと思います。
こうしたオープニングの実測値を調べた上で、いくつかマウスピースを吹いてみると自分に合ったサイズがどのくらいなのか次第に掴めてくると思います。
持ち替えをする方にもお勧めです
こうしたオープニングの実測値について知っておくことは、サックスの持ち替えをする方にも強くお勧めします。
「アルトは得意だけど、ソプラノは苦手だ」とか、サックスの種類によって得手不得手がある場合がありますが、こうしたマウスピースのオープニングを選ぶ段階でつまづいてしまっていることが、きっとかなり多いのではないかと思います。
それぞれのサックスの種類で、自分にあったオープニング・サイズをしっかり選ぶことで、持ち替えをしたときの違和感はだいぶ減らせると思います。くれぐれも、「アルトで使っているマウスピースがA社の5番だからソプラノもA社の5番でいいか」みたいな、そうした選び方は決してしないほうがいいです。混乱する原因になります。