リードには銘柄や硬さなど、たくさんの種類があります。いったい何が違うのでしょうか。サックス奏者ならば誰もが買ったことのあるリードですが、リード選びには奏者が混乱しかねない罠がいくつもあるので注意が必要です。
リードの違いをまとめると以下の三点になるのでは、と思います。
順に説明します。
ヴァンプの形
ヴァンプとはリードのスロープ状になっている部分のことです。ヴァンプの真ん中の部分をハート、先端をティップといいます。
リードの銘柄によってヴァンプの形に違いがあります。スロープ部分の厚みのバランスに違いが付けられているということです。一般的に、リードはクラシック向きの銘柄、ジャズ向きの銘柄と分けられることがありますが、その二つの種類を分けているのはヴァンプの形です。
代表的なクラシック向きの銘柄は
- Vandoren Traditional
- Rico Grand Concert Select
- Rico Reserve Classic
代表的なジャズ向きの銘柄は
- Vandoren Java
- Vandoren ZZ
- La Voz
- Rico Jazz Select
などでしょうか。
クラシック向きといわれるリードはハートが厚くて、ティップが薄い傾向があります。つまりハートとティップの厚みの差が大きいので、ティップ近くの狭い範囲が急なカーブを描いてしなる傾向があります。こうしたリードは、音の立ち上がりが速くクリアな音色が特徴です。
それに比べて、ジャズ向きといわれるリードはハートが薄くて、ティップが厚い傾向があります。ハートとティップの厚みの差が少ないので、より広い範囲が緩やかなカーブを描いてしなる傾向があります。こうしたリードはコントロールが柔軟で、倍音を多く含む音色が特徴です。
ヴァンドレンのウェブサイトでは、その振動部分のことを「パレット」と呼んでいます。
補足説明 – ヴァンプの種類とマウスピースの相性
マウスピースとリードを組み合わせるとき、上記の振動部分の長さの違いから、ショート・フェイシングのマウスピースにはクラシック向きのリードが、ロング・フェイシングのマウスピースにはジャズ向きのリードが相性が良い(かもしれない)ということです。好みの問題もあるので断言はできませんが。
細かい話になりますが、例として思い付くのはアルト用のクラウド・レイキーというジャズ用マウスピースのこと。そのマウスピースとヴァンドレン・トラディショナル(クラシック向きのリード)と組み合わせる奏者が結構多いんです。私自身が試してみてもそっちの方が相性がいいと感じます。それは、クラウド・レイキーがジャズ用のマウスピースとしては標準よりもだいぶショート・フェイシングの設計なので、相性が良いのだろうと思います。
ファイルド・カットとアンファイルド・カット
続いて、ファイルド・カット、アンファイルド・カットという区別の仕方もあります。ヴァンプの根元の部分の表皮が削られているか、いないかの差です。削られているものをファイルド・カット(写真左下)、削られていないものをアンファイルド・カット(写真右上)といいます。
ファイルド・カットの方が多少明るい音色になるように思いますが、正直に書くとそんなに大きな違いはないと思います。
ファイルド・カットは前述のクラシック向きのヴァンプと組み合わされることが多く、アンファイルド・カットはジャズ向きのヴァンプと組み合わされることが多いカットです。
昔はリードの銘柄が少なかったのでほぼ、
- クラシック向き=ファイルド・カット
- ジャズ向き=アンファイルド・カット
だったのだろうと思います。
現在はジャズ向きのリードにもファイルド・カットがラインナップされるようになり、その図式は必ずしも成り立たなくなってきているといえそうです。(Rico Jazz Select Filed Cut や Vandoren Java Filed Red Cut など)
補足説明 – フレンチ・カットとアメリカン・カット
ちなみに、似たような言葉でフレンチ・カットとアメリカン・カットという分類もあります。ただし、どうやら人によって定義がまちまちのようです。
単にファイルド・カットのことをフレンチ・カット、アンファイルド・カットのことをアメリカン・カットという人もいますし、また、ヴァンプの形を含めて呼んでいる人もいるようです。
硬さ(コシの強さ)
リードには2.5番や3番といった、番号の違いがあります。これらの番号はリードの硬さの違いで選別されています。この番号のことを「厚さ」といったりしますがそれは間違いで、番号が変わっても厚みは同じです。
注意点は、その番号の付け方が銘柄によって違うということです。リードの銘柄を変えるときはこの違いで混乱しないように、メーカーが出している硬さの比較表を参考にするといいと思います。
これを見ると、同じメーカーでもクラシック向きの銘柄の方がジャズ向きの銘柄よりもワンランク程度硬いことが多いと判ります。一例を挙げると、ヴァンドレン・トラディショナルの3番とヴァンドレン・ジャヴァの3半が同等の硬さです。標準的なマウスピースのティップ・オープニングがクラシック用とジャズ用とで違うのでそれに合わせているのでしょう。
ティップ・オープニングの項で書いたように、狭いオープニングには硬いリードが、広いオープニングには柔らかいリードが相性が良いでしょう。
音色がかすれるようであればそのリードは硬すぎです。逆に大きな音量をだそうとして息が詰まってしまうようであれば柔らかすぎです。たまに柔らかいリードは初心者用、硬いリードは上級者用のように誤解をしている方がいますが、リードの硬さと奏者の熟練度は関係がありません。マウスピースとの相性や音色の好みを考えて、演奏しやすい、自分にあった硬さのリードを選ぶと良いでしょう。