良いマウスピースのテーブルは、実は平らではない
テーブルというのはリードを取り付けたときに接する部分のことです。奥津マウスピース製作では、全てのマウスピースにこのような凹面テーブルを採用しています。
凹面テーブルとは、ほんのわずかに縦方向に内側に反らせているテーブル面のことです。それにより安定した吹奏感や、充実した音色が得られ、またリードとの良い状態を長持ちさせる効果があります。
マウスピースとリードの組み合わせで一番大切なポイントは、サイドレールの途中にある、サイドレールとリードが分岐するポイント、つまりフェイシングカーブが始まるポイントです。そこはリードの振動の支点となっている箇所なので、この分岐点に隙間ができるとリードの振動は極めて不安定になります。抵抗感が増して息の入りが悪くなったり、リードミスをしたり、低い音やサブトーンを出しづらくなったり、楽器全体の性能が著しく落ちてしまいます。
凹面テーブルとは、このリードの振動の支点(分岐点)に隙間を空けないようにするために、品質の良いマウスピースに伝統的につけられている工夫です。
凹面テーブルの上にリードを乗せたときに、テーブルの真ん中では、リードとマウスピースの間にわずかに隙間が開いています。そしてリガチャーを取り付けたときに、リガチャーの圧力によってリードを僅かにしならせることで、リードとテーブル面とを密着させています。ここで大切なのはリードがしなっている分、サイドレール上の分岐点においてリードとサイドレールが互いに押し付け合っているということです。
リードは使用するたびに湿潤乾燥を繰り返し、徐々に歪んでいきます。凹面テーブルの利点はリードが使用に伴い徐々に歪んでいったとしても、そのリードの歪みがテーブル上に付けられた凹曲面を上回らない限り、その歪みの影響を相殺できるということです。リードがしなっている分、分岐点に隙間が開くことがないからです。
世の中のマウスピースのメーカーには、テーブルを平面に仕上げているメーカーも多くあります。ですがそうした平面テーブルよりもこの凹面テーブルの方が、はるかに優れた設計だと思います。全く平面に仕上げられたテーブルでは、リードが歪んだ分、分岐点に隙間ができてしまう可能性があります。